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第50話 最高品質のサファイア

Author: 甘梨鈴
last update Last Updated: 2025-07-22 17:00:46

 それでも、ルシアンへの思慕を隠すことができなくて、エマは真っ赤な顔で俯いた。

「エマ」

「は、はいっ」

「この前案内してくれた紅薔薇(べにばら)離宮は、とても見事でした」

 ルシアンが気を利かせて、話題を変えてくれる。

 エマは赤い顔を気にしつつ、それに答えた。

「あ、はい! あの離宮は本当に素晴らしくて、何度訪れても、魅入ってしまいます」

 エマも、紅薔薇離宮を初めて訪れたときは、感激した。

 十四歳で王宮に来て、西殿(さいでん)で暮らしていた頃は、何かの折りに付けて、よく足を運んだものだ。

 けど、レオナールの婚約者に選ばれ、琥珀の館に移ってからは、離れに軟禁されて自由に出歩くことができなくなった。

 だから、先日久しぶりに訪れた紅薔薇離宮は、エマにとっても楽しい時間だったのだ。

 ルシアンも紅薔薇離宮を気に入ったのか、感心したように話し出す。

「特に、宝石で造られた薔薇には驚きました。噂には聞いていましたが、あれほどの規模とは思いませんでしたから」

「はい。高名な建築家や芸術家の方々が、何年も掛けて作り上げた芸術品ですから」

「宝石は、すべてランダリエで採れた物を使っているのですか?」

「全部ではないですが、サファイアとルビーだけは、国内の鉱山で採れた物を使用しています」

 エマは胸を張って答える。

 ランダリエ王国の鉱山のサファイアとルビーは、高品質の原石が多く採掘され、高値で取引される。

 オスティン帝国には、毎年一定量の鉱石と金を献上しているが、サファイア原石のランクは、最高、もしくは高級ランクの原石ばかりだった。

 加工技術も発達している為、ランダリエの宝飾品は外国でも評価が高いのだ。

「それは素晴らしいですね。あのような最高品質のサファイアは、どこの鉱山でも採れるのですか?」

「いえ、限られた鉱山になります。最高品質となると……カースレーン領でしょうか。あ、ワイール領も最高品質のものが採れるのですが……」

「そちらは
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